うつ病の常識はほんとうか」読了。


日本では年間3万人が自殺している。1900年には年間1万人だったので、およそ3倍。しかしこれは、日本の総人口が3倍になったためである。今後は人口も微減するが、それ以上に高齢化社会によって自殺しやすい年齢層の人口も減るため、自殺は減ると予測される。
・不況で自殺者が増えると言われるが、統計的には間違い。好況の時には自殺者が減る傾向にあるが、不況になっても平年と自殺者は分からない
・国レベルでの自殺率を決める一番の要因は、その国の幸福度ではなく、自殺へのタブー度である
・自殺率が低い国とは、宗教的理由で自殺を厳しく禁じてきた国である
・日本では責任を取って自殺することは、名誉ある行為とされた。乃木希典が自殺したとき、一部の新聞社や言論人は彼の死を美化することに疑問を投げかけた。しかしそれは一般大衆から厳しい攻撃を受けた。大学人の中には辞職せざるを得なくなったものもいた。猛烈な不買運動を受けた新聞社もあった。


ほかにも、生活は昔より豊かになっているという指標も統計的な数字を挙げて説明されている。
戦後60年で平均寿命は約30年延びた
・乳児死亡率は1899年で20%、2006年では0.26%
・労働時間は1905年は3300時間以上、2005年は1800時間
・高校の進学率は1950年頃は50%、2007年度は96.4%。大学の進学率は1955年頃は10%、現在は50%以上。専門学校は内容的には米国のコミュニティカレッジに相当するため、それらを含めると75%以上
・人口10万人あたりの殺人の件数は1950年ころは2.5〜3.5人、現在は1人

生活は豊かになっており、自殺率も増えているわけではない。
うつ病受診者が増えた要因は、うつ病の啓発活動により、受診する患者が増えたことにある。と筆者は主張している。


うつ病の常識はほんとうか
うつ病の常識はほんとうか