「折れた竜骨」読了。


魔法がある世界でのミステリーのお話。「魔法があってもしっかり考えれば犯人は分かるんだ」という作者の主張がたびたび出てくる。


ミステリーって登場人物が多くて、途中でだれがなんだか分からなくなるので、私は苦手なんだけど、これは非常にわかりやすくてよかった。それぞれの登場人物の性格付けが単純で、また人間関係も殺された領主を中心とするスター型で、容疑者同士の関係が無いのも分かりやすくさせている工夫かなと思う。出題編を読んで初めて自分でも推理しようって気になった。
そのためには出題編をもう一度読み返して検討をしてみたらいいんだろうけど、時間がもったいないので、まあ適当にアタリを付けて回答編を読んでみた。で、ミステリーとしてはややいまいちなんじゃないかなー、と思った。


とはいえ、物語としてはとても面白い。容疑者に聞き込みをして回るときの街の描写とか、とても生きたファンタジー世界を感じる。魔法、宿屋、吟遊詩人の唄、公示人。そして呪われたデーン人との戦闘が血に肉踊るという感じで本当にすばらしい。容疑者である傭兵たちは皆うさんくさいんだけど、戦闘での頼りがいはまさに一流。ファンタジーに出てくる傭兵ってこういうもんなんだ、と分かる気がした。


米澤さんの作品では「インシテミル」が映画になって、それはちょっと残念な出来らしいと聞いているけど、「折れた竜骨」こそ映像で見てみたい。

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)