「戦争の経済学」読了。


戦争について経済学の視点から論じた本。あるいは戦争を題材に経済学の初歩的な内容を示した本。
全般的に良かったが、特に面白かったのは内戦の章だった。
・内戦が強欲を引き起こす。内戦中の人生は予想がつきにくくなるから、人々は短期的な考え方をするようになる。1994年のルワンダでのツチ民族虐殺のとき、殺戮は当初はフツ民族主体の政府によって組織された。でも、いったんジェノサイドが始まると、無数の人々が単に自分の儲けのために殺害に参加した。盗めるし、殺せるし、強姦もできるし、無料で酒も飲める。
・最大の民族集団が人口の45-90%を構成しているとき、紛争が起こる確率は28%になる。支配的な民族が少数民族からリソースを奪うことで利益を得たりするからだ。ほぼ完全に優位だと、収奪行動の費用のほうが大きくなってしまうため、紛争の可能性は減る。また民族がきわめて多様な国は、紛争確率がたった3%だった。これは十分な規模の勢力を集めるのがむづかしいからだ。
・不平等には垂直格差と水平格差がある。垂直格差は所得格差で、水平格差は民族、宗教、政治集団缶にある格差である。垂直格差は紛争にはつながらない。おそらくだれが豊かでだれが貧乏かわからないからだろう。水平格差は紛争につながる。
核兵器は経済的だ。核兵器と長距離ミサイルが数機あれば潜在的が攻めてくるのを防げ、これは強大な常備軍よりずっと安い。原爆は一つ作るのに2億ドル以上かかる。しかし追加の原爆は200万ドルから400万ドルで作れる。
・1940年から1996年にかけてアメリカ政府は核兵器開発に5.9兆ドルかけている。しかしこれは同期間に通常兵器には13兆ドルかけており、かつそれらよりはるかに巨大な破壊能力をもたらした。


最後の付録「事業・プロジェクトとしての戦争」もすばらしい。日清戦争を題材に戦争の価格について試算してある。
・支出は2335億円、収入は3682億円。この数字だけ見ると収益率は57.7%(3682/2335 - 1)もあるが、もし勝率が80%だったとすると、期待収益率は5%に下がる。

  • > 計算すると-5%になる気がする。負けたときは同額の賠償金を支払うと仮定すると、収入の期待値は 3682 * 0.8 + (-3682) * 0.2 = 2209。2335億円かけて2209億円しか貰えないのだから、収益率は-5.4%。


あと
・貿易は平和につながる。貿易が多いと国際戦争の回数は減る。
らしい。つまりTPPなどを推進すると、より平和になるってことじゃないか?

戦争の経済学
戦争の経済学